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2025/04/11

「自動車運送業」への特定技能人材の受け入れ。交通事故を減らすために、企業がすべきことは?

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「自動車運送業」への特定技能人材の受け入れ。交通事故を減らすために、企業がすべきことは?

目次

1. そもそも「特定技能」とは?
2. 「特定技能」ビザドライバーに必要な要件
3. 外国人ドライバーだからこそ必要な安全教育
4. 日本人とも共通する安全管理のポイント

日本国内において人手不足が深刻な産業の一つが、「自動車運送業」です。トラック、タクシー、バス、と物流や人流を支える社会生活に必要不可欠なドライバーの確保は、日本にとって喫緊の課題です。外国人材の活用はこれを解決する一手段となっており、政府は2025年~2029年までに最大24,500人の特定技能のドライバーの受け入れを見込んでいます。そこで今回は、外国人ドライバーの安全管理について考えてみたいと思います。
すでに受け入れに関する知識がある方は、3. 外国人ドライバーだからこそ必要な安全教育から、お読みください。

1.そもそも「特定技能」とは?

「特定技能」とは、日本への在留資格の一つです。「技能実習」とは異なり、単純労働を含む幅広い業務を任せられることが特徴です。「特定技能」人材は、すべての業界で雇用できる訳ではなく、政府が「特定産業分野」として特定した分野に限られます。「特定産業分野」は、DX等による生産性向上や、国内人材確保の取り組みを行ってもなお、人手不足が深刻な特定の産業分野のことを指し、現在16分野が特定されています。「特定技能」制度自体はすでに2019年4月に創設されていましたが、分野の1つに「自動車運送業」が指定されたのは昨年2024年3月のこと。今まさにトラック、タクシー、バス運送業での「特定技能」人材の受入れが開始されたばかりです。
特定技能外国人が従事できる業務範囲は、その会社に雇用されている日本人ドライバーが、通常業務の範囲内で行う内容と同等です。高齢化が進む運輸業界にとり、外国人ドライバーの雇用は若い世代の労働力確保につながり、また外国人観光客へのサービス向上がのぞめるなど、さまざまなメリットがあります。
一方、初めて外国人を雇用しようとする企業は、手続きを煩雑に感じ、二の足を踏むこともあるかもしれません。外国人雇用のノウハウが少ない企業であれば、まずは人材紹介会社・登録支援機関(外国人材の生活支援や雇用手続きに関するサポートを行う機関)、あるいは身近な行政書士に相談し、必要な情報を集めることをお勧めします。

2.「特定技能」ビザのドライバーに必要な要件

特定技能ビザでドライバーとして勤務するための要件は、国土交通省により以下の表のようにまとめられています。現在海外に居住している場合を想定すると、入国前に特定技能評価試験>と<日本語試験>の2つに合格する必要があります。これらに無事合格した人材は、企業の採用を経て入国することになります。
外国で取得した自動車運転免許を保有している場合は、入国後、特定活動期間(期間限定の準備期間)を利用して日本の免許を取得します(外免切替)。ちなみにこの外免切替ですが、合格率が2~3割とあまり高くなく、特定活動期間中(トラックは6か月、バス・タクシーは12か月以内)に合格するためには、特に実技試験について十分な対策が必要だと言われています。

出所:国土交通省「特定技能制度における自動車運送業分野の制度概要」

3.外国人ドライバーだからこそ必要な安全教育

さて、外国人ドライバーは日本の公共の道路を運転し、物や人を運ぶ訳ですから、雇い入れる企業にとって安全対策は必須です。以前、製造業で働く外国人労働者について取り上げたことがあります。その記事では、「日本人を含む全ての労働者が労災害故にあう確率は1,000人あたり2.36人なのに対し、外国人労働者に限ると2.77人と多く、とりわけ特定技能(4.31人)や技能実習生(4.10人)は労働災害に遭遇するケースが多い」というデータを紹介しました。これは外国人ドライバーについても、対岸の火事ではないといえるでしょう。荷物や乗客の安全はもちろん、雇い入れた外国人ドライバーの方々の命も守るためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
一つには、「日本語教育」と「安全運転のための教育プログラム」の実施が挙げられます。外免切替で実技試験の合格率が低いという話をしましたが、これには言語の問題と共に、自国と日本の交通ルールの違いが影響しているようです。
ここで興味深い論文を一つご紹介しましょう。第 55 回土木計画学研究発表会・講演集に掲載された「急増する外国人運転者の安全確保に向けた 交通事故・違反特性の分析」という論文です。この論文では、訪日外国人の増加に伴うレンタカー利用の広がりと、外国人運転者による交通事故の増加が指摘されています。もちろん特定技能ビザを取得する在日ドライバーと、訪日外国人を同一に扱うことは乱暴です。しかし注目したいのは、研究者による「国籍別にドライバーの違反・事故の特徴が異なる」傾向の指摘です。こういった傾向の背景には、日本と外国の運転習慣の違いが影響しているようです。
自動車の通行区分(右側通行か左側通行か)といった明文化されたルールはもちろん、運転習慣や交通文化とでもいう暗黙のルールも国によってかなり異なります。確かに東南アジアを歩く時、車間距離をあけずに走行する車やバイク、そして頻繁にクラクションを鳴らすドライバーたちを見て、日本とはずいぶん運転環境が違う!と驚かされることがあります。
先の論文が示唆するように、もし国により発生しやすい交通違反・事故が異なるとすれば、企業にとってはドライバーの母国の運転環境も踏まえながら、安全教育を行っていくことが重要なのではないでしょうか。特に特定活動期間中の「日本語教育」と「安全運転のための教育プログラム」は、外免切替の際だけでなく、乗務を開始した後の安全管理にも有効です。今後、外国人ドライバー特有の課題に対応した、より効果的な安全教育の開発が期待されます。

4.日本人とも共通する安全管理のポイント

もう一つ強調したいのは、国籍にかかわらず必要な「人の特性を踏まえた安全管理」です。私たちが行った研究によると、同じ国のなかにあっても交通事故者とそうでない集団の特性比較において、事故者集団に見られやすい特性があることが分かっています。例えば「反応速度が遅い」「集中したり、切り替えたりするのに時間がかかる」「注意力が散漫で不安定になりやすい」といった特性です。こうした特性は、ドライバー個人の素質的側面と解釈することができるでしょう。素質的なリスクは、環境に慣れ、経験を積み重ねる(テクニカルスキルを身につけたり、自分のリスクをうまくコントロールしたりする方法を学ぶ)ことで、ある程度低めていける可能性があることも分かっています。一方、まだ日本に来て間もないドライバーに対しては、日本人にも増して、ヒューマンエラーを起こしやすい人材の特定が重要です。
従業員が業務中に交通事故を起こした場合、当然企業は使用者責任を問われる可能性があり、また被害者に対して損害賠償責任を負うことになります。後々のトラブルを考えれば、あらかじめリスクが高いと思われる人材については、入国前に採用を見合わせることも大事な経営判断となるでしょう。もしリスクが高い人材を雇用せざるを得ない場合、できる限り業務内容(業務の複雑さ、走行距離など)を調整し、本人に負荷をかけすぎないなどの配慮が大切です。先の日本語教育・安全教育とあわせ、ドライバーの特性に合わせた労務管理を検討することが、今後の事故を減少させるカギになると考えています。

今回は、特定技能ビザのドライバーの安全管理について考えてきました。「ドライバーのヒューマンリスクはどのように確認するのだろう?」と思われた企業様は、ぜひ日本・精神技術研究所にお問い合わせください。きっとお役に立つ情報が提供できると思います。

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参考文献

1.国土交通省 自動車運送業分野における特定技能外国人の受入れについて
2.葉健人・土井健司・猪井博登 「急増する外国人運転者の安全確保に向けた 交通事故・違反特性の分析」第 55 回土木計画学研究発表会・講演集

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