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2025/03/31

内田クレペリン検査で知的能力は予測できるか?

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内田クレペリン検査で知的能力は予測できるか?

目次

1. 足し算の出来高(できだか)=作業量
2. 作業量は何を予測するのか?
3. 入試偏差値 VS. 作業量

4.データから見えてくる強い相関
5.「金の卵」を見つける試金石

内田クレペリン検査は、ひたすら足し算を繰り返す「不思議な検査(つらい検査?)」として多くの人に認知されています。こんな「足し算」で、いったい何がわかるの?というのが、率直な感想ではないでしょうか。今回は、この検査が何を測っているのか?という疑問に対する回答の「片鱗(へんりん)」をご紹介したいと思います。

1.足し算の出来高(できだか)=作業量

「片鱗」なんてもったいぶった書き方をしましたが、この検査を判定するときは、結果の複数の要素に注目し、さらにそれらの要素を総合しながら意味を解釈します。総合したときに検査で何を測っているのかという点ですが、これはなかなか複雑で、一回のコラム記事で全貌をお伝えするのが難しいところがあります。そこで今回は、判定の際に注目する要素のなかでも、とくに大切な要素のひとつである「作業量」について取り上げ、その意味について考えてみます。
「作業量」とは、検査時間内にできた足し算の出来高を意味します。足し算のスピードが速い人は同じ検査時間内でたくさんの足し算ができることになり、結果的に作業量が多くなります。逆に、慎重にゆっくり足し算をする人は、作業量が少なくなるわけです。このように作業量の多い/少ないという要素は、足し算の処理の速い/遅いが反映されることになります。

2. 作業量は何を予測するのか?

作業量とは足し算の速度のこと。たしかに、この解釈は間違いではないのですが、受検者の一桁の足し算の得手不得手を予測できても、あまり現実世界では役に立ちません。じつは作業量には、もうすこし一般的な意味が隠れています。過去のデータから、作業量は学校の成績や知能指数(IQ)と関係があることがわかっています。作業量が多い生徒のほうが、成績や知能指数が高いのです。つまり、作業量は(知的)能力をある程度予測できる要素ということになります。
たかが一桁の足し算の出来高で、一般的な知的能力を予測できる?そんなことある?と、眉に唾している人もいるかもしれません。そこで、比較的新しいデータを使って、作業量がどんなふうに現実世界を反映しているかを見ていきたいと思います。具体的には、高校の(入試)偏差値と作業量のデータを使って、この二つがどんな関係になっているかを調べてみます。作業量が(知的)能力を反映しているのであれば、きっと入試偏差値とも何らかの関係が見いだせるはずです。

3.入試偏差値 VS. 作業量

わたしたち日本・精神技術研究所には毎年たくさんの高校から検査の判定依頼が届きます。今回は、そのうち高校一年生の結果だけを使用し、さらにその中から、一学期(4月~7月)までに受検した結果だけをより分けます。これが分析のための材料①です。ちなみに材料①のデータ数は、66校で11,088人分になりました。次に、この66校の高校の入試偏差値を調べます。これが材料②になります。
勘のするどい人は気が付いたかもしれませんが、材料を高校一年生の一学期の結果に厳選するのは、高校入試(だいたい2月上旬に実施)からあまり時間が経っていない新鮮なデータを使いたかったからです。入試から2か月~5か月くらいのブランクであれば、まだ入試時の学力がそれなりに保持されているだろう、という予測に基づいています。

それではさっそく、分析の結果を見てみましょう。材料①(内田クレペリン検査の結果)と材料②(入試偏差値)を合わせてみます。なんだか、合わせ調味料のレシピみたいな表現になってしまいましたが、その結果が【図1】になります。見方について、すこし説明しましょう。まずX軸(横軸)の数字は高校の入試偏差値です。いっぽうY軸(縦軸)の数字は何かというと、こちらは内田クレペリン検査の作業量の各学校の平均値を示しています。

4.データから見えてくる強い相関

あらためて【図1】を眺めてみると、グラフのなかに四角のマークが散らばって表示されています。これは散布図といって、ふたつの数字(今回は①作業量と②入試偏差値)によって各データ(今回は66校の学校)の位置が視覚的に確認できるようになったグラフです。【図1】では、各データが右上がりの直線(ピンク色の点線)に沿うように分布していることがわかります。
X軸の入試偏差値の低い学校ではY軸の作業量が少ない学校が多く、入試偏差値が上がると作業量も増えるという関係が見えてきます。Xが増えるとYも増えるという関係にある二つの値のことを「正の相関」がある、などといいます。このことから、入試偏差値と作業量には「正の相関」があることがわかります。
さらに相関の強さ/弱さを表しているのが、【図1】に添えられた「相関係数」という数字です。あまり専門的なことには踏み込みませんが、この数字は-1から+1までの値を取り、心理学の世界では、プラスでもマイナスでも0.7を超えると「強い相関」があるとみなします。入試偏差値と作業量の相関係数は0.728ですから、この二つの値には「強い相関」があることがわかるのです。

5.「金の卵」を見つける試金石

いかがでしたか。たかが足し算の出来高(作業量)ですが、これが現実を予測したり反映したりできる尺度(ものさし)であることがお判りいただけたのではないでしょうか。ただし、注意していただきたいのは、今回のような集団レベルでの相関というのは、その集団に所属する個々人の特徴とは異なるということです。どういう意味かというと、たとえ偏差値の低い学校であっても、その学校内には作業量の高い生徒から低い生徒まで、作業量の分布に幅があるということです。
高卒採用の試験で内田クレペリン検査を使用する場合、応募者の入試偏差値が低いからといってがっかりすることはありません。その学校のなかにも、作業量が多い(能力が高い可能性がある)生徒は一定数含まれるのです。採用試験で内田クレペリン検査を実施することは、そういった「金の卵」を見つけるための試金石の役割を果たすともいえるでしょう。

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