学歴や言語力を問わず利用できるのが魅力。
女性、外国人、身体障害者と、多様な採用の評価軸に。
有限会社刀根電機工業所 刀根吉崇さん
刀根電機工業所の事業内容、歴史、規模感など概要を教えてください
1960年に福岡県芦屋町で創業した製造会社です。その後幾度か移転し、現在は遠賀町で操業しています。ポンプ修理や制御盤の製作・組立に始まり、現在は産業用ロボットのハーネス製作がメイン事業です。ハーネス製作とは、家電や自動車など、多様な機械装置に組み込まれている電気用配線を製造すること。ハーネスとは、複数の電線を結束帯や粘着テープなどでまとめ、コネクタを取り付けたケーブルのことです。
従業員は200人程度で、そのうちの9割以上が現場作業を行っています。従業員の7割程度が女性で、子育てをしながら働く方も多いです。こうしたワーキングペアレンツをサポートするため、2004年からは同敷地内に保育園も併設しました。
外国人や身体障害者の方の雇用にも力を入れています。現在工場で勤務している外国人は、多くがベトナム出身の技能実習生。ベトナム人はとても勤勉で、真面目な人が多いと感じています。「特定技能」「配偶者ビザ」を持つ方も勤務しています。
多様な採用を、面接以外の軸で定量評価できる。
内田クレペリン検査を導入する前、どのような課題を感じていましたか?
私たちの会社では採用試験を実施していないため、面接試験だけで相手がどんな人材なのかを見極める必要がありました。しかし、面接試験では面接官の「感覚」が評価の基準になってしまい、客観的な判断をするのが難しいと感じていました。そのため、誰にでも分かるような定量的な評価基準が欲しいと考えていたんです。
そこで思い出したのが、内田クレペリン検査でした。以前タイにいた時、「内田クレペリン検査が現地の採用に役立っている」という話を聞いたことがあったのです。「うちの会社の採用でも使えるのではないか」と思い、日本・精神技術研究所に問合せをしました。
外国人実習生の方の採用に役立つと考えられたのでしょうか。
というよりも、相手の性別や国籍、年齢や身体障害の有無に関わらず「全ての人を定量的評価できるのではないか」と思ったからですね。
内田クレペリン検査は、1桁の数字を順番に足していくだけのシンプルな検査です。この検査が「全くできない」という人はいないはず。日本語が不自由な外国人や、バイトを探している中学生でも利用できます。そこが一番の魅力でした。もちろん、ある程度の負荷が掛かる検査なので、精神的な障害のある方には実施していませんが。
ほかの適性検査を導入することも考えましたか?
ほかの適性検査を導入するのは「難しいのではないか」というのが正直な感想でした。世の中にあるほとんどの適性検査は、大学卒業程度の学歴を有する人たちを対象にしています。そのため、学力中心の適性検査をすると中卒・高卒の子たちを足切りしてしまうことになるんです。
実際、製造業では学歴の有無はあまり関係ないんですよ。いくら学歴が高くても、指示通りに仕事ができない人は優秀なオペレーターにはなれません。学歴が低くても、自分のやるべきことをしっかりやれる人、規律を守れる人の方が何倍も貴重です。それは、女性であろうと外国人であろうと同様です。そのため、学力以外で相手を定量評価できる適性検査が望ましいと考えていました。
「入れてはいけない人」を見抜けるようになった。
内田クレペリン検査をどのような場面に導入していますか?
面接の補完として導入しています。なかでも私が見たかったのは、相手に「適性」があるかどうかということでした。
「適性」というのは、「その仕事を問題なくこなす能力が備わっているか」ということです。特定の仕事に対して「適性」がない人は、意外と多いものなんですよ。何度言っても「指さし確認」ができない人や、言われたことをすぐに忘れてしまう人。5桁の数字なら読めるけれども、10桁の数字になると途端に読めなくなってしまう人。こういった人には、任せられる仕事も限られてきますよね。こうした「適性」のあるなしは、内田クレペリン検査である程度見分けることが可能だと感じています。
「適性がない人」を採用すると、どんなデメリットがあるのでしょう。
私が最も不安視していたのが、保育園で発生する事故でした。保育園は、工場よりも「リカバリー不能な事故」が発生しやすいと考えていたからです。
保育の現場には、「子どもを置き去りにしてしまった」「食物アレルギーのある子どもに、原因となる食材を与えてしまった」など、命に関わるような危険な事故も多くあります。そのため、保育士の採用面接では、相手の「慎重さ」や「安定性」を厳しく見定める必要があると感じていました。そこで、製造部門で試験的に実施していた内田クレペリン検査を保育所のスタッフの採用に全面的に導入しました。
製造業の採用ではいかがでしょうか。
もちろん製造業でも「適性がない人」を採用しないという意識は大切です。
当然ですが、作るよりも壊すことの方が多い人は製造業には向いていません。たとえば、「確認する」という作業が苦手な人の中には、自分の手元を確認せずに作業して、大量の廃棄や作り直しを出してしまうような人もいます。あまりにも廃棄が多ければ、事業が赤字になってしまう可能性もあるでしょう。
内田クレペリン検査を活用することで、こうした採用を減らしたいと考えています。
採用難の時代では「良い人を選ぶ」よりも、
「入れてはいけない人を入れない」のが大事。
人材採用や雇用について、時代の変化や難しさを感じますか。
これは日本の中小企業共通の課題ですが、少子高齢化による採用難は感じています。
とはいえ、刀根電機が位置する福岡県遠賀郡は、福岡県の中でも人気が高く、人口も多いエリアです。遠賀郡は、北九州市と福岡市の間に位置しており、製造業を中心に多くの企業が集まっているからです。九州のなかでは恵まれたエリアですが、それでも「人手は足りていない」というのが事実です。
まさしく「猫の手も借りたい」という状態ですね。
だからといって、人を選ばずに採用するのはあまりにもリスキーです。日本の中小企業全体が「良い人を選ぶ」というよりも、「入れてはいけない人を省く」という採用方式に変わっていると感じます。もちろん、大手企業なら話は別でしょうけれども。
うちの会社でも、「ワーキングペアレンツが安心して働けるように、保育園を併設する」「外国人材を雇い入れる」といった努力はしていますが、時代的に難しいところも多いですね。
ちなみに、性別や国籍によって内田クレペリン検査の結果に違いはあるのでしょうか。
性別や国籍で検査結果が変わることはないと感じます。性別や国籍、身体障害の有無に関わらず、働く人は働くし、働かない人は働かないんです(笑)。内田クレペリン検査の結果がいいからといって、絶対にトラブルを起こさないというわけではありませんしね。
とはいえ、内田クレペリン検査はトラブルを起こしやすい人を見分ける一助にはなっているとは思います。