退職の原因は人間関係のミスマッチ。
適切な採用と人員配置で職員の早期離職が防げるように。
社会福祉法人 長岡福祉協会 大木優さん
職員が気持ち良く働ける、採用応募者の絶えない法人。
社会福祉法人 長岡福祉協会について教えてください。
1978年に新潟県・長岡市で発足した社会福祉の法人です。現在は障害者や高齢者の福祉施設を中心に、首都圏でも事業を展開しています。
内田クレペリン検査は採用や人員配置などの人事に使用しています。
介護業界は慢性的に人手不足と言われていますが、その原因の1つに人間関係の問題があります。介護職員には真面目で職人気質な人が多く、自分のこだわりを貫いたり、それが原因で同僚とぶつかったりしてしまうことも多々あるからです。
当法人では適切な人員配置を心がけることで、そうしたすれ違いがおきないよう配慮しています。人間関係を円滑にすることで、より働きやすい職場ができると考えているからです。また、介護は地域密接型のサービスなので、「あそこは雰囲気が良い施設だ」という評判が広まれば採用応募者も自然と増える。気持ち良く働ける職場作りが、人材不足の解消にもつながっています。
人間関係が円滑になり、早期離職が解決できた。
内田クレペリン検査を導入して、変化したことはありますか?
適切な人員配置ができるようになったことで、早期離職する職員がかなり減った印象です。
私は頭の中に「理想の組織図」を描きながら人員配置をしています。良い組織を作るにはハンドルになる人、アクセルになる人、ブレーキになる人と、様々な役割の人が必要だと考えているからです。
内田クレペリン検査では、その人の芯の強さや柔軟性、集中力などを可視化することができます。「この人はかなり芯が強いので、メンタルが弱っているチームAはやめとこう」「この人は集中力が続きにくいので、人の目が届きやすいチームBに配置しよう」など、検査結果を参考に配属先を決めています。
また、同検査を導入して良かったのが採用面接時に「この人の採用はちょっとリスクがあるな」というのが分かるようになったこと。
実は以前、仕事のストレスが原因で職場の物に当たってしまった職員がいたんです。人は大きなストレスを受けた際、自分でも思いもよらない行動をしてしまうことがあります。彼もまさにそのパターンだったのですが、これは非常に危険な兆候だと思いました。
そこで、同職員の内田クレペリン検査の結果を見直したところ、作業曲線に大きな突出があることが分かったんです。大きな突出があるということは、普段の生活でもいきなりエネルギーが高ぶってしまう可能性があるということ。それが良い方向に向かえば良いのですが、攻撃として発散されてしまった場合は非常に危ない。ましてや、その攻撃性が利用者さんに向かってしまったらと考えると……。
それ以来、当法人では作業曲線に大きな突出のある方の採用をお断りしています。
作業曲線の結果から、相手の向き不向きが分かる。
内田クレペリン検査を使用する際、どんなことに気をつけていますか?
内田クレペリン検査には、いわゆる理想曲線と呼ばれる定型的な作業曲線があります。けれども私は、理想曲線を描いている人が当法人にとって必ずしも良い人材だとは思いません。
例えば、介護職員の作業曲線は定型曲線から大きく外れることが多いのです。前半はゆっくりしているけれど、後半に向けて大きく伸びる。介護の現場ではこうした曲線の人の方が長続きするため、私はこれを介護の理想曲線とよんでいます。なので、どういった曲線の人が理想的なのかはその会社の業務や役職によって様々だと思います。
それと同様に、ただ作業スピードの速い人や、計算能力が高い人が素晴らしいかと言うとそれも違うと思います。
私達の運営する福祉施設でも、障害者施設か高齢者施設かによって職員の適性が大きく変わってきます。例えば、障害者施設の職員には作業スピードの速い人が向いています。障害者の方はエネルギッシュな方が多く、大声を出したり走り出したりすることもあるので、判断が遅い人はすぐに置いて行かれてしまうのです。逆に、高齢者施設の職員の場合は、作業スピードがやや劣る人の方が向いています。高齢者施設ではのんびり過ごされるご利用者が多いので、同じテンポで会話や行動ができる職員の方が相手の共感を得やすいのです。
ただ使っているだけでは駄目。
検査結果を分析し、考察することが大事。
これから内田クレペリン検査を導入しようと考えている会社に対して、アドバイスはありますか。
それぞれの会社で、内田クレペリン検査に対するリテラシーを上げていくことが大切だと思っています。
内田クレペリン検査は由緒正しい心理検査ではありますが、ある程度の知識がないとその真価が分かりません。実は当法人でも、ここ数年までは検査の実施だけをして結果の分析まではしていませんでした。検査して終わりという状況だったので、今ほどのメリットもなかったように思います。ただ導入するだけでなく、検査結果としっかり向き合い活用していくことが重要でしょう。
解析は日精研に依頼しても良いですし、セミナーや講習会に参加して教えてもらっても良いでしょう。私も検査結果の分析を始めた頃は、問題行動のある職員の結果を先生に見てもらっていました。「この人はこういう人なんです」と話すと「確かにここの突出が高いね」などの指摘が返ってきて、曲線の見方を丁寧に教えてもらえました。そんなことを繰り返すうちに、こういった曲線の人は施設内の評判が良く、こういった人は悪い、などの規則性が見えきたんです。
それで法人内でも、内田クレペリン検査の結果を参考に「この人にはこういう側面があるから、こう育てた方が良いだろう」などのアドバイスをするようになりました。それがなかなかに当たっていて、仲間内での信用度も上がってきた感じですね。
外国人採用やドライバーの適性検査など、
あらゆる場面で使用できる。
今後、内田クレペリン検査をどんなことに使ってみたいですか。
内田クレペリン検査には英語版、中国語版もあるので、外国人採用にも有用だと思います。数字を主体としたテストなので、外国人と日本人を同じ土俵の上で評価できるのがメリットですね。外国人採用を強化する際は、当法人でも英語版の内田クレペリン検査を導入しようと考えています。
利用者さんの送迎を自社で行っている場合は、ドライバーの適正テストにも使用できそうです。内田クレペリン検査で集中力や注意力を計っておくことで、事故防止にもつながるでしょう。
あとは社内で評判の良い人、悪い人に対してクレペリン検査を実施してみるのも面白いと思います。評判が良い人、悪い人のそれぞれに共通性があることも多いので、採用でも「この人はあの人の曲線に近いので良いだろう」といった判断ができるようになる。様々な職員の結果を分析しながら、自社に相応しい作業曲線を見つけていけば良いと思います。
以上でインタビューは終わりになります。今日はありがとうございました。
内田クレペリン検査はどのような検査?
日本で開発された心理検査のなかでは、もっとも長く使われている検査のひとつです。90年近くにわたって、産業や教育、そして医療の現場で使われ続けています。いまでも年間70万人の人が内田クレペリン検査を受検しており、その利用価値は依然として高く評価されています。検査方法、検査でわかること、利用実績はこちらからご確認ください。
依頼の流れ、その料金は?
実際の判定結果はどのようなものですか?
判定サービスにはいくつか種類がありますが、初めての方には「個別診断的判定」がお勧めです。採用時の選別はもちろん、面接時、人材配置時の資料としてもご活用いただけます。一人ひとりの判定結果が記載された用紙と、複数人を一覧で確認できる用紙をセットでご返却します。判定結果のサンプルはこちらからご確認ください。
検査を実施しているのはどのような会社ですか?
株式会社日本・精神技術研究所(略称「日精研」)は1947年の創業以来、心理学をベースとしたサービスや商品を提供してきました。日本を代表する心理検査である内田クレペリン検査の専門機関として知られています。古い検査と思われがちですが、最近では、外国人にも使えるアセスメントツールとして、また職場のメンタルヘルスの分野でも注目を集めており、その活用地域や分野をますます広めつつあります。