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2025/06/16

ビミョーに違う?「心理テスト」と「心理検査」

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ビミョーに違う?「心理テスト」と「心理検査」

目次

1. 人は自分を知りたい生き物?
2. 「MBTI®に酷似した」MBTIブーム
3. しかるべき「心理検査(適性検査)」の見分け方

みなさんは、MBTI®という性格検査をご存じでしょうか。先日私は、たまたま立ち寄ったコンビニで「MyBTIグミ」という名のお菓子を見つけました。実はその数週間前に、子ども(中学生)から「お母さんはMBTIで何タイプ?」と聞かれたばかりでしたので、「ついにここまできたか・・・!」と驚かされました。MBTIという言葉はここのところ、世代を超え、広く普及するワードとなっているようです。そこで今回は、仕事柄、心理検査(適性検査)注1)を扱うことのある皆さんに‟心に留めておいて欲しいこと”を書いてみたいと思います。

自分理解を深める

1.人は自分を知りたい生き物?

人には、自分に関心を持ち、自身の価値観や性格をより理解しようとする欲求がある、という考えがあります。何を隠そう、私もまた、高校生の頃は雑誌や書籍で目にする「夢分析」や「心理テスト」に夢中になった人間です。ですから、その面白さ、楽しさは十分に理解しているつもりです。当時私が手に取った多くの心理テストは、質問項目に回答すると「あなたは**タイプです」と判定してくれるものでした。解説を読みながら、「そうだそうだ。このテストはすごい当たってるなぁ。」と思ったものです。目に見えない、“自分(の心)”というものが明らかにされるようで、うれしかった記憶もあります。
一方、この経験があったからこそ、私はその後の心理の学びの中で気づいたのです。それは、こうした日常的に楽しめるテストには、思わず信じ込みたくなるような不思議な説得力があるということ。けれどもいわゆる“心理テスト”と、根拠や研究に基づいて作成された“心理検査”は、分けて考える必要があるようなのです。

2.「MBTI®に酷似した」MBTIブーム

皆さんもご存じかもしれませんが、「正式なMBTI®」というのは、一般社団法人日本MBTI協会により出版されている商品です。正式なMBTI®は、ネットで無料で診断できるようなテストではなく、また実施後に(MBTI認定ユーザーと呼ばれる)専門家の支援のもと自己理解を検証するプロセスこそを大事にしています。したがって、正式なMBTI®を受けるには、費用的にも、時間的にも、それなりのコストがかかります。
心理の世界にかかわらず、ポピュラーになる商品というのは、それだけ魅力がある証拠ですので、類似の商品が出てくることは世の常かと思います。ただ、それらの異同を正しく認識し、上手に使い分けができてこそ、その道の専門家だと思います(類似商品が、著作権や商標権を侵害していないことを前提にしています)。
実際世間では、娯楽目的で使われる「心理テスト」と、専門家が使う「心理検査」が一緒くたになってしまっていることがあります。この2つが混同された時に怖いのは、それらの確からしさの検証は抜きに、結果があたかも“真実”であるかのように受け止められてしまうことです。さらに言えば、人事のお仕事をしている皆さんであればご存じのように、「心理テスト」や「心理検査」は、それを受けた人に大きな影響を与えることがあります(時には、人生を変えてしまうようなことも)。だからこそ、私たちは、しかるべき場で用いる検査については、その確からしさを判断してから使用する責任があるのです。

「心理テスト」と「心理検査」

3.しかるべき「心理検査(適性検査)」の見分け方

では、私たちは「心理検査」の根拠となる確からしさをどのように見分けたらよいのでしょうか。ポイントは、「信頼性」や「妥当性」が担保されているか、の確認です。
信頼性とは、検査により測定された結果が一貫しているかどうか?を示す概念です。同じ人が同じ条件下で複数回検査を受けた場合に、大きく結果が異なってしまうのでは心配ですよね。例えばここに、性格検査があったとしましょう。同じ人が同じ日に何度か検査をしたところ、判定が「A」となったり「B」となったりするならば、検査の信頼性は怪しいと言えそうです。
また妥当性というのは、その検査が本当に測りたいものを測れているのか?を示す概念です。先の例では、その人材の性格を測りたかった訳ですが、実際に測っているのが知能だとすると、意味がありませんね。このように、知りたい情報が測れるのかどうか、が妥当性です。
心理検査というのは、このように「信頼性」と「妥当性」を兼ね備えてこそ、その結果を有効に用いることができます。ですからまずは、マニュアル等でそれらが十分に説明されていることを確認する必要があります。しかし利用者にとって悩ましいのは、「信頼性」も「妥当性」も100点満点中80点、とか20点という風に、明確に表現されていない点です。だからこそ開発者は、まわりくどくても、実施者向けのマニュアルや頒布資料などで、可能な限りの情報を公開し、その開発過程や検証過程を説明しているのです。世に出ている“人を測るツール”が、すべて確からしい訳ではないということを心に留め、利用前に一歩立ち止まっていただければと思います。

さて、皆さんが利用されているツールは、「心理テスト」でしょうか。それとも「心理検査」でしょうか。名前はそっくりだけれども、結果の確からしさが担保されていない類似品だった、なんてことはないでしょうか。私たちのところにも時折、「あれ?」と気になる問い合わせが来ることも事実です。企業として人を測る時には、ぜひ信頼できる「心理検査」をご活用ください。

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参考文献

1.重野純編(1999)心理学:キーワードコレクション
2.小塩真司(2025)性格診断ブームを問う

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