目次
1. 採用試験でスクリーニングができない?
2. 採用難の時代、採用試験はこう使う
3. 合否判断のためだけでなく、適性をとらえる
4.個ではなく、チーム全体のバランスで考える
厚生労働省により毎月発表される有効求人倍率。そのデータには、新卒者を対象とした求人や、ハローワーク以外の求人媒体の利用は含まれないものの、年ごとの変化から雇用動向をうかがうことができます。数字を見ますと、2014年以降、有効求人倍率は「1」を上回り続けており、2024年1年間の全国平均は1.25倍でした(求職者1名あたりに対して、1.25件の求人がある状態)。
その中でも特に注目したいのは、職業別の有効求人倍率。最新の2025年1月の職業別の有効求人倍率をみると、建設躯体工事(9.00倍)、土木(7.25倍)、機械整備・修理(4.73倍)、介護サービス(3.77倍)などと、特定の職業について特に人手が不足していることがうかがえます。今回は、企業が人材獲得に苦慮する中での、採用試験の活用について考えてみたいと思います。

1.採用試験でスクリーニングができない?
業務を人の労働力に依存する割合が高い産業を「労働集約型産業」と呼びます。たとえば建設業、製造業、介護などがそれにあたりますが、これらの業界は、労働時間の長さや賃金の低さから敬遠されることもあり、先の有効求人倍率からもうかがえるように、まさに人手不足の状態です。
従来、採用試験の利用法としてもっともシンプルなやり方は「一定の基準を超えれば採用。それを下回れば不採用。」というスクリーニングです。欠員を埋めたいのに、せっかくの応募者が既定の採用基準をクリアしないという状況に、苦悩されている人事の方もいるのではないでしょうか。実際、この業界のお客様からは「もはや、採用試験でスクリーニングをする余裕がない」との悲鳴が聞こえてきます。今、私たちはどのように採用試験と向き合えばよいのでしょうか。
2.採用難の時代、採用試験はこう使う
まず考えられるのは、採用基準を見直すこと。これは単に、採用基準を甘くする、ということではありません。もし、皆さんの会社で「長年引き継いできた採用基準」が存在するのであれば、今こそ、それを見直す時期にきているのかもしれません。基準を作成した当初とは時代が変わり、求める人物像も異なってきているということはありませんか。採用基準だけが独り歩きしているケースも見受けられます。なぜその基準を設けていたのかを、あらためて問い直していただくとよいかと思います。
採用試験の利用を絶対評価から総合評価に変えることも一つの方法です。特に試験を、採用プロセスの早い段階で実施する場合、検査結果を「絶対評価」として足切りで用いるケースもあるかと思います。そうなると、面接に進む以前に、あるいは面接の評価が高かったとしても、泣く泣く不採用というケースが出てきてしまいます。試験結果の評価を、面接評価や応募者の保有するスキルなどとあわせて総合評価として用いれば、採用人数を増やせる可能性がありそうです。また、もともと総合評価として用いていた企業についても、評価の中で試験結果に関する評価の重みづけを低くする(ウェイトを調整する)こともできそうです。
ただし、検査結果の利用に関して注意いただきたいのは、基準をただただゆるめないことです。なぜなら、採用試験のメリットは、面接や履歴書からでは測りがたい応募者の特徴を、客観的に把握できることにあります。採用後のコストを考えれば、「自社に(は)合わない」人材を、やはりどこかでスクリーニングしなくてはなりません。

3.合否判断のためだけでなく、適性をとらえる
採用試験の中には、合否を決めることを主目的にしている検査も存在します。一方で、これからの時代、「これまでであれば採用していなかったような人材」を採用する可能性も高まっていると考えられます。そんな時は、単なるスクリーニングではなく、内定後の配置や教育でも利用できる検査を利用しましょう。たとえば「能力」面に関して例をあげるならば、その試験結果は、任せられる仕事の難易度や、任せられる仕事の量とも関係します。これまでと採用基準を変えるのであれば、入社後の教育方法も変えなくてはならない、ということになります。多様な人材を同様に扱うのでは、定着率も高まりません。人手不足という向かい風は、ある意味ダイバシティを推し進めるきっかけにもなっています。負担は増しますが、せっかく採用で実施した適性検査の結果を、ぜひ内定後の配置や教育にも活かしていただければと思います。
4.個ではなく、チーム全体のバランスで考える
最後にもう1点、ぜひ目を向けていただきたいことがあります。採用試験の場合、とかく「個人」の結果に目が向きますが、「グループ」単位でバランスを考えることも重要です。ここでは、適性検査「内田クレペリン検査」を例にとって具体的にお話します。この検査は、製造業や運輸業などで、機械操作や運転を行う人材の「ヒューマンエラーの起こしやすさ」を確認する指標として安全管理に用いられています。前述の通り、これまでであれば採用を見合わせていた多少リスクの高い人材も、企業が受け入れていくことになるかもしれません。そうは言っても、これまでであれば採用を避けていた人材ばかりが採用され、同じチームに配属されるのでは、短期間でリスクがぐっと高まることになります。こんな時は「個」ではなく「全体」のバランスを意識します。ヒューマンエラーを起こす可能性が高い人材については、より安全な業務に配置するなどの工夫もしつつ、所属グループの中にハイリスクな人材が偏らないよう、一定の割合にとどめることにします。こうすることで、人手が足りないという現実に一歩歩み寄った上で、リスクを最小限におさえることができるはずです。
さて、今回は人手不足の時代の採用試験の使い方について、いくつかのご提案をさせていただきました。採用難から採用試験の利用に苦慮する企業は、これからも増えていくことでしょう。そのような状況下でも、“スクリーニングだけでない”活用ができる採用試験と、うまくお付き合いいただければと思います。
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