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2025/02/10

アジアの鉄道網の広がりとともに

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アジアの鉄道網の広がりとともに

目次

1. 日本の新幹線システムの輸出(台湾)
2. 最高水準を求められる高架鉄道(タイ)
3. 交通渋滞や大気汚染対策に取り組む(フィリピン)

みなさんは“モーダルシフト”という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。トラック等の自動車で行われている貨物輸送を、鉄道や船舶の利用へと転換することを言います。日本では、CO2排出量を削減する対策として、またドライバー不足解消の一手として注目されています。アジアや中東などの新興国では、大気汚染への対策に加え、都市部の交通渋滞の緩和の文脈で語られることも多いモーダルシフト。今、こうした社会課題を解決する手段として、鉄道が再評価されています。
そんな鉄道と切り離すことができない適性検査が、内田クレペリン検査です。今回は、アジアの鉄道網の広がりと共に、私たちが経験した“3つのストーリー”をご紹介したいと思います。

1.日本の新幹線システムの輸出(台湾)

さかのぼること1949年。日本の鉄道会社で初めて検査を導入したのは、当時の国鉄(現JR)でした。その目的は鉄道事故を減らすことにあり、75年が経過する今でも「運転適性」をはかる検査の一つとして、人材面から日本の鉄道の安全を下支えしています。
鉄道の中でも日本の新幹線は、特に安全性が高いことが知られています。日本は今、国をあげてインフラの海外輸出を進めていますが、新幹線システムの輸出もまた、その一角を担っています。
2007年に開業した台湾新幹線は、日本の新幹線が海外に輸出された初の事例です。開業前から、JR東海がハード面・ソフト面で台湾高速鉄道を支援しており、その関係で内田クレペリン検査にも興味を持っていただきました。私たちも、海外鉄道に検査を広げるチャンスと意気込んだのですが、残念ながらこの時点では検査導入が実現しませんでした。(※詳細は韓国サムスンでも利用された適性検査。山あり谷ありの海外進出に迫る!(前編))。一方、この頃から海外鉄道へ検査を紹介する機会も増えていったように思います。

2.最高水準を求められる高架鉄道(タイ)

台湾での1件から数年後。私たちは東南アジアへの進出を計画していました。この記念すべき東南アジアのはじめてのお客さまが、実はタイの鉄道会社、BTS(バンコク・スカイトレイン)でした。BTSはバンコク都心を走る高架鉄道として、タイ鉄道の中では最高水準を求められる鉄道会社の一つです。みなさんもタイを訪れたことがあれば、一度は乗車されているかもしれませんね。
検査の導入時期は2007年頃でしたので、かれこれ18年ほど運転士の採用で利用いただいていることになります。導入時には社内でデータの分析が行われ、鉄道事故と検査結果に関係があることが認められたそうです。かなり自動運転化が進んでいるBTSですが、悪天候の日や車庫入れのタイミングなど、人の手が必要となる場面はいくつもあり、こうしたシーンでヒューマンエラーによる事故発生を軽減することに役立っているのだそうです。また検査はドライバーへの運転適性検査としてのみでなく、広く行動特性を測定できるため、今ではオフィススタッフの方にも利用いただいています。詳細はインタビュー動画でご紹介しています。
BTSへの導入以降、タイの運輸副大臣や運輸省鉄道局局長など、要人の方々にもお目にかかることができ、鉄道の安全性を高める検査としてその有効性を認知いただきました。2025年現在では、ありがたいことに、タイのすべての電気鉄道事業者に検査を導入いただくに至っています。

3.交通渋滞や大気汚染対策に取り組む(フィリピン)

舞台をフィリピンにうつします。急激な経済発展に伴い、フィリピンのマニラ首都圏では、交通渋滞や大気汚染が深刻化。こうした社会課題を背景に、2016年に発足したドゥテルテ元大統領は、インフラ整備に取り組んでいました。政策「Build, Build, Build」では、鉄道分野をその最重要インフラと位置付け、自動車から鉄道への輸送シフトに本腰をいれたのです。
この鉄道整備事業において欠かせないのが、鉄道人材の育成です。当時のフィリピン政府は、既存鉄道職員への再教育と、整備中の路線の運営・保守職員に対する研修を含め、15,000 人規模の鉄道人材を育成する必要があると試算しました。日本の国際協力機構(JICA)もまた、これを支援しています。
2019年12月には運輸省所轄の団体として、フィリピン鉄道訓練センター(PRI)が設立されました。“人材面の支援”となれば、まさに私たちが強みとするところ。JICAやプロジェクトにかかわる方々に支援いただくとともに、現地販売店(One World Human Resources Development Inc.)の独自ルートも使いながらPRIに働きかけを行いました。その甲斐あって、2023年フィリピンの運輸省 (DOTr)から正式に内田クレペリン検査を受注しました。現在、フィリピン国鉄(PNR)を含むすべての路線で、運転士への検査実施が行われています。

さて、今回は少し話が大きくなってしまいましたが、それぞれのお国事情などを踏まえながら、私たちの“3つのストーリー”をご紹介してきました。従来、「内田クレペリン検査は鉄道事故を減らす検査」という意識が強かった私たちでしたが、こうして俯瞰してみると、検査の利用が社会のインフラ整備や、社会課題の解決とつながっていることを感じさせられます。冒頭にご紹介した“高速鉄道”といえば、日本の新幹線システムが導入されるインド高速鉄道からも目が離せませんね。2026年の開業に向け、ここにもまた新たなストーリーが生まれるのかもしれません。

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参考文献

1. 一般社団法人 海外鉄道技術協力協会(2023) 『最新 世界の高速鉄道』
2. 国土交通省 モーダルシフトとは

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