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近年、民間企業による障害者雇用の取り組みは、ますます重要性を増しています。民間企業が雇用すべき障害者の割合を示す「法定雇用率」は段階的に引き上げられ、2026年7月には現行の2.5%から2.7%になる予定です(障害者雇用促進法)。これは従業員数が37.5名以上(現在は40名以上)の企業であれば、少なくとも1名の障害者を迎い入れる計算です。実際、厚生労働省の「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業に雇用されている障害者の数は、過去最高を更新し続けています。
障害者雇用に対する意識の高まりを受け、障害者雇用を単なる法令順守のためだけでなく、業務改善や、健常労働者にとっても働きやすい職場づくりにつなげていこうという取り組みもはじまっています。今回は、障害者雇用に取り組む人事担当者の方に向けて、特に採用時における「適性検査」の利用可能性についてお話したいと思います。

1.障害者採用と「適性検査」
「採用時の適性検査の利用」と表現すると、皆さんは合否を決めるための、スクリーニングを目的とした利用をイメージされるかもしれません。しかしもし、障害者雇用で適性検査を利用するのであれば、これを「定着支援」のために利用することをお勧めします。
合否判断に用いることをお勧めしない理由は、障害特性によって、検査方法を工夫して実施が行われていたり、必ずしもご本人の特性を測れなかったりする可能性があるためです。たとえば視覚障害により受検に影響がある場合、標準的な検査方法では受検が難しく、音声読み上げソフトを使用したり、文字や図形を拡大して提示するといった工夫が行われることがあります。また精神障害や発達障害であれば、当日の体調や服薬が検査結果に影響を与えるかもしれません。したがって、一般採用と同じ基準で結果を解釈したり、さまざまな影響を考慮せずに結果を用いたりすることは、少々乱暴な使い方であると言えるでしょう。
一方、必要な配慮を講じた上で検査が実施できる場合、採用時の適性検査の結果は、応募者への理解を深めることに役立てられます。障害の内容や程度だけで画一的に業務内容を考えるのではなく、働く人それぞれの能力や適性にあった仕事とマッチングさせる企業の努力は、当事者のやりがいにもつながる大切な取り組みです。
2.定着率を高めるには
皆さんは、障害者の定着率が一般労働者に比べて低いということをご存じでしょうか。ここ数年の雇用動向調査によると、一般労働者の1年後の定着率は88%~89%程度なのですが、これに対して(一般企業へ就職した)障害者の方の定着率は58.4%となっています。つまり障害者雇用では、いったん採用ができても離職が発生しやすく、採用担当者だけでなく、現場の受入れ担当者にとっても負担が大きくなっていることが分かります。
冒頭の「法定雇用率」を維持・達成したい企業にとっても、「定着」への取り組みは大事な経営課題です。では、定着を高めるにはどのような方法があるのでしょうか。先の調査によると、職場に起因する離職理由のうち大きなものとして、「仕事内容の不適合」が挙げられています。つまり、自分の能力や特性に対して、業務の難易度や内容が合っていなかったと感じる人が多いということになります。これを減らすために、まず採用段階でできることが3つあると考えます。まず一つ目が、「①具体的な求人情報の提供」です。募集している職務内容、勤務形態などについて詳しい記述があることで、自分の能力や体力で活躍できそうか、応募者側もイメージしやすくなります。過去の受け入れ事例や、実施した配慮事例等についても記載があれば、なお入社後のミスマッチを防ぐことにつながるでしょう。二つ目に有効なのが、「②雇用前の職場実習(インターンシップ)」です。入社後のミスマッチがあったと感じる場合、作業負担が大き過ぎたと感じるケースもあれば、逆に単純作業ばかりでやりがいを感じられない(キャリア形成への不安)というケースも存在します。実習体験は、ご本人が業務内容を確認する機会になるため、納得して入社いただくことに有効です。また実習の機会は、企業側にとってもメリットが大きく、どのようなサポート(配慮)が必要となるかを把握し、働く環境を整えることにも役立てられます。この双方にメリットのあるトライアル期間が、定着率を高めることは間違いありません。そして三つ目にお勧めしたいのが「③適性検査の活用」です。これについては、次の章で詳しくみていきましょう。

3.障害者理解に使われる「適性検査」
そもそも、障害者支援や障害者採用においては、どのような適性検査が利用されているでしょうか。たとえば、「内田クレペリン検査」は健常者の職業適性検査として知られていますが、もともとは医療や教育の分野で、当事者の個別性を理解し、支援することを目的に利用されてきました。自治体の障害者雇用や、就労支援、職業訓練センターなどでも長く活用されてきた検査で、まさに民間企業の障害者雇用でも用いやすい適性検査と言えます。一般の採用では、合否判断に用いられることも多いのですが、障害者雇用の際は、応募者を理解したり支援したりするための一助として用います。
検査の結果は、例えば、精神障害をお持ちの方では型にはまらないような作業傾向が見られたり、知的障害の方の場合にはゆっくりとした作業スピードという形で確認ができたりするなど、受検者ひとりひとりの働きぶりをの状態や程度を把握することに役立てられます。他にも特性として、「注意を持続することに多少の波がありそう」とか、「物事に没頭する方である」といった可能性を把握できれば、その方に合った業務内容の選定や、職場の環境整備も行えるでしょう。上司や同僚がより適切なコミュニケーションを取れれば、ご本人のやりがいにもつながり、組織に貢献してもらいやすくなるはずです。 しかし冒頭で触れたように、ご本人の特性に応じて、検査の実施方法や結果の解釈については、十分な配慮を講じる必要があります。また人事担当者の方は、適性検査を障害の診断に利用することはできないということもお伝えしておきます(参照:コラム「内田クレペリン検査とメンタル疾患の関係について」 )。検査の実施方法や活用に迷う場合は、ぜひ弊社までご相談いただければと思います。
さて、今回は障害者雇用の採用時における「適性検査」の活用について見てきました。これからますます増える障害者雇用において、よりよい出会いが増えることを心から願っています。
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参考文献
1.厚生労働省 事業者向けリーフレット「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です。」
2.厚生労働省 「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」
3.厚生労働省 「令和6年 雇用動向調査結果」
4.独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者の就業状況等に関する調査研究(調査研究報告書No.137)
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