目次
1. そもそも、モチベーションとは何か?
2. 日本人のモチベーションの傾向
3. 内田クレペリン検査とモチベーション
4. 非定型とモチベーション低下
過去に職業適性に関する記事がありましたが、従業員のパフォーマンスを考えるうえで、適性と同時に気になるのがモチベーションではないでしょうか。そこで今回の記事では、内田クレペリン検査と仕事へのモチベーションに関するデータをご紹介したいと思います。足し算を繰り返すだけの検査でモチベーションがわかるの?という疑問について、一緒に考えていきましょう。
1. そもそもモチベーションとは何か?
「モチベーション」と一言にいっても、実際には場面や文脈によっていろいろな意味を含みます。この「さいころぐ」の過去の記事でも、内田クレペリン検査を受検するときの態度のことを「モチベーション」と表現していたりします。この文脈で使用する「モチベーション」は持続時間がごく短時間で、想定している場面もかなり限定的なものです。つまり、狭い意味でのモチベーションと言えます。一方で、企業の人事担当者が知りたいと思う従業員の「モチベーション」はもっと長時間にわたって持続し、かつ仕事全般に対する広い意味でのモチベーションではないでしょうか。
そこで、今回の記事では後者のモチベーションを取り上げていきます。では、そういった従業員に期待される広い意味でのモチベーションを、どのように測ればよいのでしょうか?モチベーションを測る検査は複数ありますが、今回はドイツの会社(OD-Tools)が開発したモチベーションを測る質問紙検査(Motivation Questionnaire)を用いました。この検査はマズローの欲求階層説や、ハーズバーグの二要因理論、外発的・内発的動機付け、燃え尽き症候群など、過去のモチベーションに関する代表的な理論や研究をもとに開発された検査です。ドイツ語版をはじめ、英語や中国語など外国語版も出版され、国際的に普及している検査といえます。現在、日本語版の開発を進めているということで、日本人を対象とした予備調査に協力しました。今回は、その調査の分析結果を一部紹介したいと思います。
2.日本人のモチベーションの傾向
職場で用いられるモチベーション検査は一般的に、受検者が「どのような動機づけ要因により、仕事への意欲が高まるか」を把握する検査です。また受検者の「モチベーションの程度」も測ります。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、モチベーションの国際比較をすると、日本人はとても低い傾向が出ることが知られています。Web検索やAIを使って「日本人のモチベーション」といったキーワードを調べると、日本人のモチベーションが低いという先行研究や調査結果がたくさん出てきます。はたして今回の予備調査の結果は、どうだったのでしょうか?まずは(報酬や評価といった外部からの働きかけによるモチベーションではなく)個人の興味や関心など、内面から湧き出るとされる内発的モチベーションを中心に確認してみましょう。

先に結論を言えば、今回の調査でも先行研究と同様の結果が示されました。【図1】は、モチベーション検査から8つの指標に注目し、国ごとに偏差値で示しています。一番右のIMIは、モチベーションの高さを総合的に評価する項目で、それ以外の7項目は内発的モチベーションにあたる個々の項目です。それぞれの項目でものさしの性質が異なるため、それらを比較するために偏差値に換算しています。入試の際に用いる偏差値と同じで50が平均、50以上の値はその項目がより満たされており、50より低くなると不満が強まることを意味します。日本と比較しているのはドイツ語版、英語版、ハンガリー語版、中国語版、ベトナム語版の結果で、いずれもすでに商品化されているものです。なお、日本人のデータは、あくまでも少人数で行った予備調査の結果ですので、今回は点線で示しています。
予備調査の結果という留保つきながら、内発的モチベーションも総合評価も他国と比べて日本は低い傾向が明らかです。8項目すべてで偏差値40未満、そのうち3項目は30未満となっています。他の先行研究の結果と矛盾しない、むしろそれを裏づけるような結果と言えそうです。ただし、この結果を「日本人はやる気がない」と単純に受け止めるには注意が必要です。少人数の結果であるということだけでなく、たとえば「謙遜」や「謙譲」といった日本の文化的な特徴が回答に影響しているのかもしれません。あるいは、30年以上にわたって経済成長が停滞しているといった時代背景が影響している可能性も否めません。
3.内田クレペリン検査とモチベーション
日本人のモチベーションが低く表れることの原因も気になるところですが、この記事の主旨からすこし外れてしまうので、本筋に戻りたいと思います。「内田クレペリン検査とモチベーションには、どのような関係があるのか?」今回のモチベーション検査の予備調査にあたって、一部の回答者に内田クレペリン検査を同時に受検してもらいました。その結果から、あらためて内田クレペリン検査とモチベーションの関係を見ていきましょう。
このモチベーション検査には非常にたくさんの指標があるのですが、今回の分析では38項目の指標を対象としました。その38項目と内田クレペリン検査の代表的な指標であるAV値(=平均作業量)とPF値(=作業曲線の定型性を表す数値)の2項目に何らかの関係があるか、統計的な方法で調べてみました。その結果、統計的に無視できない関係が認められる組み合わせは、76組(38項目×2項目)のなかでたったの1組しかありませんでした。総合評価指標のIMIを含む他の75組は「ごくわずかな関係」か、もしくは「関係がない」という結果となりました。この結果を見ると、ひとまず、内田クレペリン検査と持続的な仕事へのモチベーションは無関係と結論付けることができそうです。
4.非定型とモチベーション低下
二つの検査の個別の項目同士の関係で見る限り、内田クレペリン検査とモチベーションは無関係という結論を述べましたが、別の分析で興味深いデータが得られたので、少し掘り下げてみたいと思います。すでに内田クレペリン検査を利用しているユーザーのみなさんは、「定型」とか「非定型」といった表現になじみがあるかと思います。これは作業量や作業曲線などの複数の要素を総合的に判定した結果です。つまり、先の分析で使用したAV値やPF値の総合評価と言っていいでしょう。この総合評価で見てみると、モチベーションとの間にちょっとした関係があることがわかってきました。

【図2】は、内田クレペリン検査の定型~非定型を五段階に分けた「五群別」という分類ごとのIMI(モチベーションの総合評価)の平均点を示しています。高度定型群~準定型群までの三つの群ではIMIの平均点に大きな差はありません。しかし非定型群と重度非定型群では平均点がぐっと低くなっていることがわかります。この図で示したIMI以外の複数の指標でも同様の傾向が表れており、非定型グループでは定型グループよりも全体的にモチベーションが低いことが確認されました。
先に出した「無関係」という結論を踏まえてこの結果を解釈するとすれば、「今回の対象者の多くを占める定型グループにおいては内田クレペリン検査の結果とモチベーションは無関係だが、少数派の非定型グループにおいては低モチベーションと関係がある」ということになります。非定型は、性格や行動に独特のクセが出やすく適応の範囲が狭くなりがちです。また、非定型の一部には、メンタルヘルスの不調や変調が含まれる場合があります。そういった特徴が、結果的に職場でのモチベーションの低下に結び付きやすいということなのかもしれません。
今回の検証結果は、皆さんの日頃の実感と比較していかがだったでしょうか。「日本人のモチベーションは他国に比べて本当に低いのか」や、「非定型グループとモチベーションには本当に関係があるのか」については、さらなる検証が必要になりそうです。
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参考文献
1.Motivation Questionnaire-Technical-Manual OD tools
2.Motivation Questionnaire-個人結果報告票 OD tools
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