勇三郎のポケットダイアリー

勇三郎は、大変な筆無精ということで有名な人でした。(彼の言葉で言えば「作業障碍」ということになるわけでしょう。)人様にいただいた手紙に返事を書くというのは稀なことだったのではないでしょうか。それに対し、勇三郎夫人花は、無類の筆まめで、食卓に隙間を見つけては手紙や葉書などを気軽に書いてしまうような人でした。だから、勇三郎に来た手紙などにも「勇三郎代」と書き添えて返事を出していた可能性が大いにあったと思います。
その筆無精の勇三郎が、1922年(彼、28歳の時)小さなポケットダイアリーに薄い鉛筆文字で日記(のようなもの)をつけているのが一冊だけ残っています。で、これが勇三郎らしい奇妙なものなのです。

ためしに、6月4日(火)のところを見てみると、こんな風です。

4日(火)
83 8:30AM(25゜) 36.5゜
67 10PM(25゜) 36゜
 
不快 depressive

まるで判じ物のような記述ですがどう読めばいいのでしょうか?
1922年6月4日は雨だったのですね。これは、まったく問題のない記述です。ただし、雨ということには彼の心理状態が関与していた可能性もあります。
次の「83」という数字ですが、これは恐らく朝起きたときの脈拍数だろうと思います。
次の「8.30AM」は、起床時間でしょう。「(25°)」は気温だと思われます。「36.5°」は、体温と考えて間違いないと思います。
2行目の諸数値は、1行目と同様、夜寝るときの脈拍数、就寝時間、気温、体温となるのでしょう。
3行目は、一日中不快で、憂鬱だったということを意味しているのでしょう。

ところどころ抜けている日もあるのですが、ほとんど同じような記述が薄い読みにくい字で書いてあるのです。読む方も、何か陰々滅々とした気持になります。
でも、こういうところに勇三郎という人の真骨頂があったと言ってもいいのかもしれません。 自分の生理的な側面を見続けることによって、心理的な問題 を解く鍵が見つかるかもしれないと素朴に思っていた勇三郎には、少々滑稽さも感じますが…。

日時: 2007年09月04日 16:24   カテゴリ: ユウザブログ   投稿者: uchida-j